プログラミング言語およびコミュニティの「Scratch」や著作権関連について記載しています。2022年5月現在の内容で、専門家の意見ではなく、一ユーザーとしての体験や調べたことをまとめています。最新の情報は、公式サイトなどでご確認ください。
小学生になじみがあるプログラミング言語といえば「Scratch(スクラッチ)」です。ブロックをドラッグ&ドロップしてつなげていくことで、プログラミングができるので、取っ掛かりやすいという特長があります。また、「Scratch」はコミュニティがあり、作品を見せ合ったり、リミックスしたりと、様々な活動ができます。多くの子どもたちが夢中になり自由に使える反面、気をつけなければいけないこともあります。
息子は小学2年生くらいから、「Scratch」を楽しんでいますが、いくつかルール違反をしていることがわかり、彼に説明して対応しなければならないことがありました。
ビジュアルプログラミング言語
▼Scratch(スクラッチ)
https://scratch.mit.edu/
▽スクラッチについて
https://scratch.mit.edu/about
▽コミュニティガイドライン(Scratch)
https://scratch.mit.edu/community_guidelines
▽利用規約(Scratch)
https://scratch.mit.edu/terms_of_use
ユーザーアイコンがキャラクターになっていた
子どもがやってしまいがちな事として、ユーザーアイコンに好きなキャラクターを設定するというものがあります。息子も「好きだから」という理由で設定していたので、変更してもらったのですが、「他の人はやっているのに、なぜ自分だけだめなの」と聞かれました。確かに他のユーザーでもよく見かけます。「自分だけ」というわけではなく、他の人が作ったものは勝手に使ってはいけないことを伝えました。
▼著作権(ちょさくけん)ってなに?(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/kids/find/bunka/mext_0008.html
▼楽しく学ぼうみんなの著作権(文化庁)
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/tanoshiku/
その後、息子は自分でユーザーアイコンとしての利用を許可しているサイトを見つけてその画像を使っています。また、プロフィールのページに、アイコンの著作権者について記載してもらいました。
クリエイターが作成した画像メーカーで、イラストをカスタマイズできる。クリエイターによって利用許可範囲が異なるので、確認が必要です。
▼つくってあそべる画像メーカー「Picrew(ピクルー)」
https://picrew.me/
ユーザー名が本名に近かった
「Scratch」では、本名を使わないよう注意書きが表示されることもあり、本名は使っていなかったのですが、近しい名前になっていたので、変更しました。最初に登録した時に、自分の名前とかけ離れるとわかりくいだろうと私がつけたのですが、今考えると判断ミスでした。
しかも、「Scratch」のユーザー名は変更できません。新しいアカウントを作成することになってしまいました。
プロジェクト(作品)にScratch cat(スクラッチキャット)を使っていた
「Scratch」のマスコットキャラクター「Scratch cat(スクラッチキャット)」。プロジェクトの最初に表示されるし、チュートリアルでも登場し、素材として用意されているパーツ(スプライトライブラリー)にも登場します。このネコを動かすことから始める人が多いと思いますし、数あるプロジェクトで使われ共有されています。
そして、著作権という観点からすると、「Scratch cat(スクラッチキャット)」をプロジェクトで使って公開するのは、本来はルール違反になるのだと思います。また、ScratchのロゴやScratch Cat(スクラッチキャット)等は商標で、「許可なく使用することはできない」という記述がありました。Gobo、Pico、Nano、Giga、Teraという「Scratch」に登場する可愛いキャラクターがいますが、こちらも商標です。
Scratchのロゴ、Scratchキャット、Gobo、Pico、Nano、Giga、TeraはScratchの商標です。これらはScratchチームからの明示的な許可なく使用することはできません。
引用元:よくある質問と答え(FAQ)
https://scratch.mit.edu/faq#permissions
ただ、「Scratch Cat(スクラッチキャット)」を動かしてプログラムを学び、リミックスして楽しみ、共有してコメントし合うケースが非常に多いので、このような使われ方は事実上黙認されているとも考えられます。この辺りは、正直よくわかりません。
息子には、「Scratch Cat(スクラッチキャット)」の使用は、黙認されているかもしれないけど明確に記載されていないので、自分だけ見られる場所ならOKだけど、共有するのはNGかもしれないと話しました。
ちなみに、「いらすとや」のように、フリー素材といわれるものでも「Scratch」での利用は許可されていない場合もありますので、使用の範囲について確認することが必要です。
▼いらすとや
https://www.irasutoya.com/
▽よくあるご質問(いらすとや)
https://www.irasutoya.com/p/faq.html
このページに、「Scratchのような素材の再配布機能のあるシステム内でのご利用もお断りしています。」との記載があります。
スマホゲームのスクリーンショットを使っていた
ゲーム画面のスクリーンショットを「Scratch」の自分の作品(プロジェクト)に使っていました。ゲーム画面をベースにプログラムをつけて、そのゲームを再現するという内容でした。作品を作る意欲はよいのですが、公式サイトの利用規約を見るとやはり許可されていない様子です。「東方LostWord(とうほうロストワード)」という作品でした。
作品やキャラクターが好きで、ユーザー同士で楽しむという使われ方は黙認されているケースが多いとも思える状況ですので、すべてをやめさせるかは正直悩むところです。特に子どもの場合は、「みんながやっているから」「自分も作ってみたいから」といった理由でどんどん作品を作っていく傾向があります。ただ、自分でルール違反かどうかの判断や線引きするのが難しいので、創作意欲は大事にしつつ、気になるたびに一緒に考えていくというスタンスを取りたいと考えています。
また、東方関連として「東方ダンマクカグラ」(※2022年10月28日にサービス終了)というゲームがありますが、二次創作についての記載があり、公式と誤解されない配慮があり創作性が含まれるものについてはOKのようです。
ちなみに、「上海アリス幻樂団」によって制作される「東方Project」と呼ばれる作品群については、一定の条件の元、二次創作がOKとなっています。
▼東方LostWord (東方Projectの二次創作)
https://touhoulostword.com/
▽利用規約(東方LostWord)
https://touhoulostword.com/tos/
▼東方ダンマクカグラ(東方Projectの二次創作)
(※2022年10月28日にサービス終了)
https://danmaku.jp/
▽二次創作ガイドライン(東方ダンマクカグラ)
https://danmaku.jp/news/637Qdiel8W3Kx5mFbTDQAz/
▼東方よもやまニュース(東方Projectの公式・公認情報を発信)
https://touhou-project.news/
▽東方Projectの二次創作ガイドライン
https://touhou-project.news/guideline/
音楽や歌詞を掲載していた
音楽や歌詞を掲載していました。「JASRAC(ジャスラック)」の管理楽曲でしたので、これはNGということで削除してもらいました。
また、「JASRAC」と許諾契約していいて、楽曲を利用した動画や歌詞をアップすることができるサービスもあります。「YouTube」もOKなんですね。
▼JASRAC (一般社団法人日本音楽著作権協会)
https://www.jasrac.or.jp/
▽ブログへの歌詞の掲載について(JASRAC)
https://www.jasrac.or.jp/info/network/pickup/blog.html
▽利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧
https://www.jasrac.or.jp/news/20/ugc.html
ちなみに、「Scratch」で使えるフリー音楽として、「魔王魂」というサイトがあるので、チェックしてみてください。可能な限り、「音楽:魔王魂」と著作表記してくださいとのことです。
プロジェクトのコピーを行っていた
「Scratch」の大きな特徴に「リミックス」があります。「リミックス」とは、他の人が作ったプロジェクトをコピーして、自分の手を加えることです。プロジェクトの中を見たり、リミックスすることで、どのような構造になっているのかがわかり、学びになるという考え方のようです。
「Scratch」には、たくさんのリミックス作品が共有されていますが、変更しないまま、プロジェクトのコピーだけして共有するのはNGとなります。「リミックスする」というボタンを押下して作品を作ると、原作へのリンクと原作者へのリンクが自動で付き、リミックス作品であることが明示される仕様になっています。
また、プロジェクトのファイル自体をコピーしてダウンロードすることができるため、自分の作品でないプロジェクトを自分の作品のようにアップすることが可能です。クレジット表記(著作表記)しないままだと、盗作になってしまいます。息子は手を加えていたので完全な盗作とも言い切れないのですが、クレジット表記なしにリミックスした作品を共有していました。「リミックス」の文化やルール、原作者に対する姿勢などを伝えて、対応してもらうようにしました。
用語集
「Scratch Wiki」から、知っておいたほうがいい主要な言葉をピックアップし簡単にまとめました。「Scratch Wiki」も参考にしてください。
プロジェクト(Project):作品のこと。
スタジオ(Studio):プロジェクトをまとめたページのこと。
キュレーター(Curator):スタジオに招待され、招待を受け入れたユーザーのこと。キュレーターができること。
・プロジェクトの追加
・自分が追加したプロジェクトの削除
・自分のプロジェクトの削除
・キュレーターから自分自身を削除
マネージャー(Manager):スタジオの所有者のこと。1つのスタジオには40人までマネージャーを置くことができる。 マネージャーは、キュレーターができることに加えて次のことができる。
・スタジオ内の全てのプロジェクトの削除
・キュレーターの昇格
・キュレーター、スタジオの所有者以外のマネージャーの削除
・キュレーターの招待
・「誰でもプロジェクトを追加できるようにする」の設定の変更
スタジオの所有者(Studio Host):スタジオの所有者は、マネージャーの中でもさらに上位の権限を持つ。スタジオの所有者は、マネージャーができることに加えて次のことができる。
・スタジオのタイトル、画像、説明文の変更
・スタジオの所有者の変更
・スタジオの削除
スプライト(Sprite):プロジェクト内で使うオブジェクトのこと。スプライトは自分で作ったり、PCなどのデータを取り込んだりする他、あらかじめ用意されたライブラリから素材を使うこともできる。
まとめ
子どもに夢中になれることがあるのは、いいことで自由に楽しんでもらいたいと思う反面、息子は著作権やルールに対する意識が薄いので、私たち親も含めて事あるごとに確認や学ぶことが必要だと思いました。
一方、あれもこれもダメとなることで、創作意欲が削られてしまうデメリットもあります。また、「Scratch」は、リミックスして構造を理解し、真似しながら学ぶという側面があります。
著作権の世界は複雑で、時代とともに考え方も変わります。自分の常識や自分の知っているルールは正しいものとは限りません。ルールの線引きも難しい。世の中すべてが白黒つけられないこともあり、どのような姿勢でいるのかという点から考えるきっかけになりました。
